Jan 27, 2017
食を司る場所
あるお客様から、Eテレの「グレーテルのかまど」という番組のキッチンが素敵なのでそんな感じのキッチンがいいな、とご希望があり、先日ちょうどテレビでそのキッチンをみることができた。落ち着いた色のブルーの壁に木とタイルで作られた、しっかりとしたあったかいキッチン。しまわず見せながら収納するタイプのキッチン収納で、キチンと人がいて、食に向き合いながら楽しむ空気感がそこにあった。
私たちもたくさんのキッチンを作る中、その場所にあった形で、イメージをつくり、隠す、見せるを意識しながら手持ちの荷物の収めることに奔走しつつ、動線をトレースする。キッチンはアクセサリーではなく、一番大切な「食」を司る場所。そこには家それぞれの思いと暮らしのリズムが見え隠れする。
私自身、あまりに仕事が忙しく外食や総菜で済ませていた時はキッチンは無彩色の静かな場所であった。人が集まり料理をしたり、お弁当や夕食の支度をする場面が増えると、湯気や包丁の切る音がそのキッチンに生命を与え、その場所がカラフルに彩られていく不思議。
キッチンを作るときにその光景を目に描きながら、そこに立つお母さんやお父さん、子供たちの息遣いに耳を澄まして形づくりたい。今度のキッチンから見える景色はどんなだろうかと。しっかりと地に足をつけたそんな暮らしがこれから求められる中、キッチンの在り方もすこしづつ変わっていくと感じている。
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