Feb 6, 2016
内と外
数年前に「プール」という映画を見た。あれは確か東南アジアのどこかが舞台で、主人公の小林聡美がゲストハウスを営んでいる設定。そこのリビングダイニングがとても印象的であったことを思い出す。中庭に大きな円形型の草で作った屋根があり、その下にキッチン設備や、ダイニング、リビング家具がある。外の階段をのぼっていくと寝室があり、そこは外の風がはいらないようにガラスと壁で仕切られていた。泊り客は離れにそれぞれの部屋があり、食事になるとその中庭的リビングに集まる。暖かい地域だからこそできる設計ではあるが、なによりも内と外の境目が曖昧であり、その曖昧さに憧れた。
昔の日本家屋も似たような雰囲気であった。玄関には大きな土間があり、土間を一歩上がると茶の間的な囲炉裏スペースがあった。縁側に腰掛けながら家の庭を眺め、垣根の向こうには人の気配が感じられる。夏を意識して作られた建物だからこそ、風通しということが最大のポイントだったので、「内と外」を必然的に繋げなくてはその効果が得られない。
現代は断熱、防犯、遮断の住まいづくりが主流になっているが、心のどこかに「内と外」との曖昧なつながりを取り入れたいとの思いが断ち切れないでいる。66の住まいもKSの会社も木でつくった大きなガラスの扉と土間の洗い出しのコンクリートで内と外とをつないでいる。そのどちらともつかない空間こそが、家の中にいて外の風や気配を心で感じられる場所であり、大自然と繋いでもらえる架け橋となる。
ソラもこのガラスのドアのところへ行っては毎日外を眺める。太陽の日差しと人のにぎわいを感じながら。
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